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Fender Mustang

小柄な女性でも弾きやすいエレキギターとして定評があるのが、フェンダー・ムスタングです。
1964年にスチューデントモデル(学生でも手に入れやすい廉価なモデル)として登場したのがその最初。
ムスタングという名前は「マスタング」という風に発音する方がより正しいのですが、日本ではムスタングという呼び方が定着していますね。
この名称は、フェンダーの創業者であるレオ・フェンダー氏が大の車好きであったことから付けられたもの(フォード・マスタング)で、他にジャガーなども同じパターンで名前が付けられています。

SQUIER ( スクワイヤ ) / Vintage Modified Mustang Fiesta Red
SQUIER ( スクワイヤ ) / Vintage Modified Mustang Fiesta Red

ムスタングの特徴

ショートスケール

ムスタングの特徴と言えば、まず最初に挙げられるのがネックの長さ。
ショートスケールと呼ばれるもので、ナットからブリッジまでの長さが24インチ(609.6mm)になっています。
これはストラトキャスターやテレキャスターなどのロングスケール(25.5インチ、647.7mm)に対して約38mm、レス・ポールやSGなどのミディアムスケール(24.75インチ、628.65mm)に対して約19mm短くなっています。
数字だけ見れば大きな差ではないように感じるかも知れませんが、ネックの太さも他に比べて細く作られているため、実際に弾けば明らかな差異を感じるはずです。
ネック長が短い=弦のテンションが低いということになるので、弱い力でも押弦しやすくなり、非力な女性にとっては大きな魅力ですね。
ただ、弦のテンションが低いという事は、サスティンが伸びないという事でもあるので、その辺りには注意が必要です。
又、重量的にもレス・ポールの4kg強よりもグッと軽く、平均して3kg台前半くらいになります。
さらに、ルックス的にも女性が持つとすごく似合う。
これらのことから、女性に向いていると言われるんですね。

キャラクターは”じゃじゃ馬”

サウンド的には低音が弱いためにチープと言われます。
確かに、ムスタング単独では薄っぺらい音になるのですが、バンドで演奏する場合は低音部をベースの音が補完してくれますので、むしろバンド演奏の中ではバランスの取れた音を出すとも言えます。
また、「ダイナミック・ヴィブラート」という、ストラトのシンクロナイズド・トレモロよりも軽い力で操作できるトレモロユニットを搭載しています。
これがなかなかに曲者で、ダイナミックな演奏できるのはいいのですが、構造的にチューニングが狂いやすいという欠点があります。
さらに、軽い力で操作できるという事は、ちょっとしたことでアームが動くという事でもあり、それがさらにチューニングの狂いにつながります。
ストラトのシンクロナイズド・トレモロもチューニングが狂うと言われますが、それ以上に狂いやすいので、扱いに注意が必要なのです。
ムスタングという言葉には「暴れ馬」「じゃじゃ馬」という意味があるのですが、まさに名前の通りに機嫌を取りながら上手く乗りこなさないといけないギターなんですね。

二基のシングルコイルPU

もう一つ特徴的な点として、ピックアップが挙げられます。
ムスタングの場合、二基あるシングル・ピックアップのそれぞれにセレクタースイッチが付いていて、ON・OFF・逆位相ONを選べるようになっています。
一基だけを使用する場合はONと逆位相ONはどちらも同じ音がしますが、二基使用する場合で片方がON、もう片方が逆位相ONになっていると、アウト・オブ・フェイズ・サウンドと呼ばれる高音部が強調された(中低音が落とされた)独特の音を出すことができます。
又、二基とも同位相にすると、コイルの巻き方向が逆になっているために疑似的なハムバッカー状態になり、太いサウンドを出すことも出来ます。

ムスタング使用アーティスト

代表的なムスタングプレイヤーとしては、ニルヴァーナのカート・コバーンが挙げられます。
また、日本ではCharが使用したことで人気が出た時期もありましたね。
近年では、ノラ・ジョーンズでしょう。
彼女のチャーミングでセクシーなルックスとムスタングのマッチングは、もう奇跡的ですらある。(笑)
あと、アニメの「けいおん!」に登場したことで、楽器店ではムスタングが飛ぶように売れた時期もあったようですね。

廉価な価格設定

現在のフェンダー社のラインナップには、廉価ブランドであるスクワイヤーのものと、ジャパン・エクスクルーシヴシリーズ(旧フェンダー・ジャパンに相当)のものが存在しています。
また、2017年モデルからはoffsetシリーズとしてメキシコ製のムスタングも発売されています。
値段的には5万~10万円未満で手に入るので、フェンダーのラインナップとしてはかなり安い部類に入るでしょう。
扱いが難しいと言う面がネックとなり、海外ではあまり人気が高くないギターで、事実1982年にアメリカでの生産はストップしているのですが、その小ぶりなボディサイズは日本人に非常に向いていると言われています。
そのため、日本国内での需要は高く、1986年に復活した際も当時のフェンダージャパンが生産を行っていました。
旧フェンダー・ジャパンに相当する、現在のジャパン・エクスクルーシヴシリーズは、日本のダイナ楽器が生産を行っているようですね。