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モズライト 

http://guitarsound.info/guitar-brand/mosrite-1/

エレキ小僧たちが憧れた往年の名ブランド(モズライト編:その2)

2016年現在で3つの工房で生産されているモズライトですが、実は3者とも製品ラインナップに大きな違いはありません。
まあ一言で言ってしまうと、ベンチャーズモデルを3者とも生産しているのです。
現在生産されているベンチャーズモデルには大まかに分けて63年モデル、64年前期モデル(タイプI)、64年後期モデル(タイプII)、65年モデルの四つがあって、モズライトUSと黒雲製作所は63年と65年モデルのみを、フィルモアは4モデルとも生産しています。


まず、各モデルに共通している特徴については、以下のようになっています。

ベンチャーズモデルの特徴

・独特のデザイン


ボディシェイプはダブルカッタウェイですが、ストラトのような一般的なダブルカッタウェイタイプのギターと異なり、一弦側のホーンの張り出しが大きくなっています。
また、ヘッドの先端は「M」の文字をかたどった形状になっています。
フロントピックアップが斜めに配置されているのも、外観上の大きな特徴ですね。

・高出力なシングルコイルPU

モズライトに採用されているシングルコイルPUはかなり高出力のものとなっていて、甘く太いサウンドが特徴。
ベンチャーズサウンドの象徴ともなっていますね。

・ビブラミュート+ローラーナット

トレモロユニットにはビブラミュートという、ビグスビーに似たタイプのものが採用されています。
このトレモロユニットはアーミングしても和音が崩れにくい特徴があり、ローラーナットとの組み合わせでチューニングの狂いも抑えられる構造となっています。

・細いネック

モズライトのナット幅は39mmとなっていて、レス・ポール(43~46mm)やストラトキャスター(42~43mm)に比べてかなり細くなっています。
レス・ポールのネックが幅広くて弾きにくいと感じている方は、モズライトの細いネックが合うかも知れませんね。

・ゼロフレット

ナットのすぐ横にフレットが配置されていて、これをゼロフレットと呼びます。
ゼロフレットがないギターの場合、開放弦の音がフレットを押さえた場合の音に比べて「ボーン」という感じに響くのですが、ゼロフレットを配置することによって開放弦の音とフレットを押さえた音との差異がなくなります。
ゼロフレット部分の滑りが悪くなるとチューニングが狂いやすくなるので、潤滑剤を使ったメンテナンスが重要。


ここからは各モデルの特徴を簡単に挙げておきますね。

モデル別の特徴

・63年モデル


セットネック仕様でボディにバインディング装飾が施され、アウトプットジャックがレス・ポールのようにボディ側面に配置されています。
ベンチャーズモデルとしては最も高級な仕様と言われるのが、この63年モデル。

・64年前期モデル(タイプI)

ボルトオンネック仕様でボディにバインディング装飾が施されています。
アウトプットジャックがジャズマスター/ジャガーのようにピックガード上に配置されているのが、63年モデルとの大きな違いです。
ボルトオン部分にカバーが付けられているのも、64年モデルの特徴。

・64年後期モデル(タイプII)

基本仕様は前期モデルと同じですが、バインディング装飾が省略されています。

・65年モデル


65年モデルはいくつかの仕様が存在するのですが、現在生産されているモデルは基本的に64年後期モデルと概ね同じ仕様です。
ボルトオン部のカバーが省略されている点が、見た目で判別出来る差異になります。


そして、ここからは各社の特徴。

工房別の特徴

・モズライトUS

通称、真正モズライト。
63年モデルと65年モデルがレギュラー品としてラインナップされています。
価格設定が40万円から80万円と高価なのと、販売店が少ない(2016年時点で7店舗)点が入手のハードルを高くしています。
特に販売店は指定制で、東京・千葉・大阪・熊本に各1店舗ずつ、京都に3店舗しかなく、その他の楽器店には置いてありません。
ですので、東北・北海道や沖縄の方はちょっと大変かもですね。

・フィルモア

フィルモア製モズライトは、セミー・モズレー氏の娘であるダイナ・モズレー氏が設計したと言われているピックアップに定評があります。
2016年現在では、63年モデルと65年モデルのほか、3者の中で唯一64年モデルもレギュラーで生産しています。
現在、フィルモアのホームページ上ではUSA製のみがラインナップされていますが、未確認ながらショップでは日本でのOEM生産品も販売されているようです。
ただ、USA製は価格設定が高く、60万円から90万円と真正以上。
また、真正同様に販売店舗数が少なく、確認出来た範囲では公認ショップは東京のフィルモア社自身と、岡山に一つあるだけのようで、地方の方は入手にかなりの手間がかかりそうです。
販売店は真正のように指定制ではないようですが、一般の楽器店では新品を置いてある店は現状ではあまりなく、取り寄せが可能かどうかも店によって異なるでしょうから、購入を希望される方は一度お店に問い合わせた方が良いように思われます。

・黒雲製作所

黒雲製モズライトは、価格が20万円弱から35万円前後と3者の中では最もリーズナブルな設定になっています。
実売価格20万円弱のSuper Excellent’65、25万円前後のSuper Custom’65、30万円前後のSuper Custom’63、35万円前後のROYAL’63という四本柱の構成。
ギターの作りは国産品らしい丁寧な作りで評価が高く、金属パーツにGOTOH製が採用されるなど安定感の高い品質になっています。
販売力に関しても3者の中では最も高く、楽器販売大手の島村楽器で購入できるなど全国各地で入手することが出来る上、ネット通販でも購入可能となっています。


お家騒動が泥沼化してしまったモズライト。
一番の問題は3者ともベンチャーズモデルに固執するあまり、未来志向のビジネスモデルを構築できていない点かも知れません。
現状ではモズライトというブランドは、1960年代のエレキブームを知るシニア世代以外の需要が低く、そのシニア世代がさらに高齢化してギターを弾かなくなれば、いずれ消滅してしまう可能性が高いのです。
ユーザー側の視点から見れば、3者それぞれの強みを結集すれば、まだまだ若い世代にも受け入れられるギターを作ることは出来るはずなんですけどね~。
難しい事かも知れませんが、何とか明るい未来志向の関係になる事を願うばかりです。

 

エレキ小僧たちが憧れた往年の名ブランド(モズライト編:その1)

モズライトは元々アメリカのカリフォルニア州に本拠を置いていたギターメーカーで、ベンチャーズが使用していたことで有名なブランドです。
今、元々と書きましたが、これには理由があって、現在モズライトはアメリカに籍のあるブランドではないからなのです。

よくラーメン店で本家とか元祖とかが店名に付いていて、どの店もみんな自分が正統な後継者だと言って争ってる話がありますよね。
まああれは、創業者が誰を自分の後継者にするのか明確にしないうちに亡くなっちゃったりしたのが原因であることが多いのですが、モズライトに関してもそのパターンがまともに当てはまってしまいます。

創業は1950年代

モズライトはリッケンバッカーの従業員であったセミー・モズレー氏が、1950年代に友人の牧師の協力(と言っても、いくつかの助言と20ドルの資金提供だったようですが(笑))を得て兄と共に設立したブランドで、モズライトという名前はモズレーと牧師の名前「レイ・ボートライト」を組み合わせたものになっています。
設立当初はガレージでほとんどの作業を行う個人工房レベルでしたが、カントリー・ギタリストのジョー・メイフィスへのギター提供で話題となり、売り上げを伸ばしていきました。

多くが日本に輸出されていた

モズライトのギターはベンチャーズの使用モデルが代表的で、その特徴的なデザインと、パワフルなシングルコイルのサウンドキャラクターによって人気を博しました。
特にベンチャーズは日本で人気が高かったため、モズライトのギターもそのほとんどが日本向けとして生産され、最盛期には月に600本ものギターを生産していたこともあるそうです。
今でも当時を知る年配の方にとってはベンチャーズと言えば、すぐにモズライトのギターが頭に思い浮かぶはずでしょう。
他にもラモーンズのジョニー・ラモーン、国内では加山雄三氏や、寺内タケシ氏、高中正義氏などの使用が有名ですね。

エレキブーム後は受難の時代

ベンチャーズのお陰でギターがバカ売れしたモズライトでしたが、創業者のセミー・モズレー氏は技術者としては優秀であったものの商売には向かない性格の人だったようで、エレキブームの終焉以降は会社の経営が苦しくなります。
そして1969年には最初の倒産。
どうやら、新製品として開発したアンプが不発だったことが倒産の引き金となったようです。
その後何とか復活を果たしますが、工場が火災に遭うなど試練は続きます。
そんな中、セミー・モズレー氏が1992年に病死し、その後をセミー氏の四番目の妻であったロレッタ・モズレー夫人が引き継ぐものの、結局会社は1994年に倒産。
アメリカのギターブランドとしてのモズライトは、この時点でその歴史に幕を下ろします。

ファーストマンから黒雲製作所へ

最も重要な市場であった日本でのギター販売に関しては、まず、最盛期であった1968年に日本のファーストマン社とライセンス契約しています。
これは高まる需要に米国内の生産力だけでは追いつけなくなった為に、日本の工場に生産委託して生産数を確保するととともに、当時非常に高額であったモズライトギターの価格を抑えることが目的の契約でした。
そして、この時にファーストマン社の下請としてギター製造を行ったのが黒雲製作所でした。
ファーストマン社は69年にモズライトが倒産した際にギター製造から撤退するのですが、モズライトのギターに対する需要自体はあったために黒雲製作所はモズライトブランドのギター製造を継続し、そのまま現在に至っています。

創業者の娘を味方にしたフィルモア

また、米国モズライトが最初の倒産から復活した際に、1976年から日本の輸入代理店を務めたのがフィルモア楽器店(現:株式会社フィルモア)でした。
フィルモア社はセミー・モズレー氏の没後、所有者がハッキリしていなかった商標を取得(後の裁判では正式に商標を取得していないとされています。)し、日本の東海楽器やアメリカのギターメーカーに生産委託することでモズライトブランドを維持します。
フィルモア版モズライトには、セミー氏の娘であり父と同様にギター・ビルダーでもあるダイナ・モズレー氏が関わっており、愛好家の間でも定評のあるフィルモア製ピックアップは彼女が開発したとも言われています。

未亡人が真正モズライトを立ち上げ

こういった状況の中、一度は経営から撤退したロレッタ夫人が再び参戦。
京都に工房を構え、かつてモズライトの工場に勤務していたクラフツマンを迎え入れてモズライトUSカスタムショップ(通称:真正モズライト)を立ち上げています。

そして三つどもえの争いに・・・

こうして、最も長期間モズライトを生産し続けブランドの維持に多大な貢献をした黒雲製作所、父のDNAを受け継ぐダイナ・モズレー氏擁するフィルモア社、セミー氏の妻であるロレッタ夫人率いるモズライトUSの三つどもえの戦いとなります。
当初最も有力と目されていたのは商標権を取得しているとされたフィルモア社でしたが、黒雲製作所を相手取った裁判ではフィルモア、黒雲双方に正式な商標権がないという判決になりました。
さらにフィルモア対ロレッタ夫人の裁判では夫人側の勝利となり、今のところモズライトUSがモズライトの正式な商標を所有しているとされています。
(実はこの辺りの事は色々と情報が錯綜していて、現時点での詳しいことは分かりません。一応、ここではロレッタ夫人が権利を所有しているとしておきます。)
ただ、裁判の結果はロレッタ夫人の勝ちであったものの、他の二社も生産を禁じられた訳ではなく(生産してよいという許可がある訳でもありませんが)、現在もモズライトブランドとしてギターの生産・販売を継続しています。

現時点で正統とされるモズライトUSですが、過去にモズライトの工場で働いていたというクラフツマンの手によるハンドメイドをウリにしているので小規模で生産数が少なく、価格も高く(40万円以上)なっているので、一般のギタリストにはなかなか手が出にくい。
フィルモア版モズライトも、フィルモア社自体があまり規模が大きくない(2016年現在で従業員3名)ので、唯一USA製を販売しているという強みはありますが、販売力があまり高くなく、価格もモズライトUS同様に高額です。
これに対し、法的には最も不利とされている黒雲製作所版モズライトですが、長年モズライトブランドのギターを生産してきただけあって実績面で強みをもっており、販売力は三社の中で一番あります。
また、ギター自体の作りもしっかりしていると定評があり、価格も二十万円以下のものがあるなどラインナップ面でも充実しています。

この三社のどれが本物のモズライトなのかという問題については、なかなか答えは出せないでしょう。
裁判で勝ち、モズライト出身のクラフツマンを擁するモズライトUSこそが本物という事も言えますし、セミー氏の娘のダイナ氏が関わるフィルモア社や、一番長い実績を持つ黒雲製作所もそれぞれに本物としての要素を持っています。
そもそも、60年代のベンチャーズモデルを生産していた工場や会社組織が既に存在しない以上、本物のモズライトはもうないと考えることも出来ます。
きっと、ギターを弾く側である私たちが納得するギターを選べば、それが本物ということなんでしょうね。

 

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モズライト(Mosrite)のエレキギターについて

モズライト(Mosrite)のギター

モズライトの歴史は、1950年代初頭にリッケンバッカー社で働いていたセミー・モズレーが密かにオリジナルのギターを作っていたことで解雇された所から始まります。その後、協力者であるレイ・ポートライトと自身の名前を合わせて「モズライト」を創立。始めはガレージで製作していましたが、故ジョー・メイフィスの目にとまり、以後彼のトレードマークとなったダブルネックを製作したことから知名度を上げていきます。

1963年にはベンチャーズモデルを発表、エレキブームの立役者となり一時代を築きますが、ブーム終焉とともに倒産。いろいろあって、現在では3つの会社がそれぞれモズライトを生産しています。

 

モズライト・ギターの特徴

ルックス的に大きな特徴は、高音弦側の方が出ている(=ストラトタイプとは逆の)ダブルカッタウェイのボディです。こっちの方がハイポジションが弾きやすいという理由からではなく、あくまでデザイン的なものですが、それでも最終フレットまで十分に指が届くようになっています。この独特のシルエット、モズライトの頭文字「M」をかたどったヘッドの切れ込み、ローラーナットを採用した大きなビブラートユニットによって、一目でモズライトと解るハッキリした個性を醸し出しています。

音楽的にはベンチャーズやGS、サーフミュージックのイメージがあまりにも強く、そのためこれらの黄金期であった60年代を意識したファッション、また60年代をリスペクトしたサウンドが求められるバンドで使用されるのが一般的です。しかしジョニー・ラモーンがパンクでこの楽器を使用したように、他のジャンルでもチャレンジしたくなる楽器でもあります。

高出力ピックアップ

ピックアップ

モズライトのサウンドを語る上で外す事ができないのがピックアップの出力です。シングルコイルながらコイルの巻き数が多く、ハムバッカーにもまさる音量、そして甘いサウンドが得られることから、クリーンに設定したアンプでのメロディー弾きがやりやすく、このためベンチャーズを筆頭とするエレキインストバンド御用達のギターになりました。フロントピックアップが斜めに設置してありますが、ブリッジ側に比べて狭くなっている弦間の幅にポールピースを合わせる工夫になっているとともに、ルックス上のポイントにもなっています。

ゼロフレット

ヘッド部分

ナット付近にフレットが打ってあり、これを「ゼロフレット」といいます。これにより解放弦と押さえた弦とのサウンドが同じになるとともに、ナットの高さをシビアに調整する必要がなくなります。このためナット調整のあまい楽器に比べると、特に1フレット、2フレットが押さえやすくなります。滑りが悪くなりチューニングが狂いやすくなることがあるので、弦交換の際に潤滑剤を塗るなどの処置をするのが定番の手入れです。

ローラーナット

ブリッジ部分

ブリッジで弦を直接受け止める部分がローラーになっているので、弦を送り出したり引き込んだりする動きがスムーズになります。このためアーミングをしたときに生ずるチューニングの狂いを軽減できるようになっています。

細いネックグリップ

ナット幅39mmは、細い事で有名なリッケンバッカーの40mmよりも細い、エレキギターの中では最も細い部類で、モズライトの大きな特徴です。一般に太いと言われるギブソンから持ち替えると困惑しそうですが、ピッタリとハマる人にはたまらない握り心地になっています。太いグリップでは弾きにくさを感じるという人に、是非試して欲しい握りです。

モズライト・ギターのラインナップ

mosrite-guitar 左から:Original Mark-I 1963、1964、Mark-I Reissue 1965、Mark-I Reissue 1966、Dana’s Model

現在モズライトは、今は亡き創始者セミー・モズレーの妻、ロレッタ夫人が社長となって京都で製作している「モズライトUS」、創始者の娘ダイナ・モズレーを冠して製作している「フィルモア・モズライト」、かねてから下請けとして製作していた「黒雲製作所」という3つの会社がそれぞれプロダクツを展開しています。

各社のラインナップにそれほど大きな違いはなく、63年モデル、64年モデル、65年モデル、ジョニー・ラモーンモデルがそれぞれ作られています。モズライトUSとフィルモア・モズライトは概ね40万円〜70万円台の高級機がメインで、黒雲製作所では10万円台のものが作られています。全モデル、バスウッドボディ、メイプルネック、ローズ指板、ゼロフレット搭載は共通スペックです。マニアの間では、フィルモアはピックアップが優秀で、黒雲は楽器本体の作りがいい、という評価がされています。また、いずれのメーカーもオーダーメイドを受け付けています。

63年モデル

記念すべきベンチャーズモデル。アウトプットジャックがボディサイドに付けられ、ボディ外周にはバインディングがほどこされています。セットネックになっており、仕様としては最も高級な設計ですが、黒雲製作所ではリリースされていません。

64年モデル

アウトプットジャックをピックガード上に移動、バインディングは残しつつネックはデタッチャブルになっています。

65年モデル

ピックガード上のアウトプットジャック、デタッチャブルネックで、ボディ外周のバインディングは廃止になっています。

以上3つのモデルにはほとんど違いがないようにも思えますが、それぞれ年代に合わせたピックアップがセレクトしてあり、サウンドで年代ごとの違いを出しています。

ジョニー・ラモーンモデル

mosrite-M2JR-700

 

「Mark-II」とも呼ばれる異色モズライト。フロントにスモールハムバッカー、リアにストラト用のシングルコイルをマウントし、ブリッジはチューン・O・マチックをセレクト。ソロを取らず一貫してコード弾きに徹した、ジョニー・ラモーンのスタイルにマッチしたハードコア/パンク仕様の楽器です。

 

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