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(肥育ホルモン剤不使用)

 
・約40年で消費量半分に 「アメリカ人の牛肉離れ」の背景に何が(マネーポストweb 2020年2月17日)



(上)アメリカの精肉売り場では、「HRMONES FREE(肥育ホルモン剤不使用)」と表示された牛肉が人気

※関税率の引き下げに伴い、米国産牛肉の輸入が増加している。消費者にとっては価格が安くなって有難いかもしれないが、その一方で米国産牛肉の多くは「肥育ホルモン剤」としてエストロゲンなどの女性ホルモンを投与されて育てられているという現実がある。
 
家畜における合成肥育ホルモンの継続的な使用が安全であるかどうかについて、因果関係の立証は難しいが、EU諸国では肥育ホルモンを使用して育てた牛肉の輸入を一切認めていない。ボストン在住の内科医・大西睦子さんはこう語る。

「1970年代半ばから1980年代初めにかけて、プエルトリコなどで幼い女の子の乳房がふくらんだり、月経が起きるなど、性的に異常な発育が続出しました。その原因がアメリカ産の牛肉に残留した合成肥育ホルモン剤『ジエチルスチルペストロール』だとされたのです。そこで、アメリカでは1979年に、EC(現在のEUの前身)では1981年に使用が禁止されました。
 
ただし、同種の合成女性ホルモンは使用され続けてきました。そこでヨーロッパでは家畜へのホルモン投与反対運動が起こった。1988年に使用の全面禁止、1989年には合成女性ホルモン剤を使用したアメリカ産の牛肉などが輸入禁止になりました。最近では、女性ホルモンを多く利用・服用すると乳がんが増えるという研究データもあり、ホルモン剤の使用はさらに疑問視されています」
 
一方で、「アメリカ人も食べているわけだから大丈夫でしょう?」という素朴な疑問も浮かぶ。米国メディア日本特派員が話す。

「実は、アメリカ人も肥育ホルモン剤を使った牛肉を食べることを嫌って、どんどん“牛肉離れ”が進んでいるんです」
 
アメリカの食事といえば、ワイルドなステーキなど牛肉なくして成り立たないイメージがあるが、それは古い感覚のようだ。

「たしかに、かつては牛肉はアメリカで最も多く消費されていた肉類でしたが、それは過去の話。1976年に牛肉が肉全体の年間消費量のおよそ半分を占め、1人あたり年間40kgほど食べていた。しかし、2018年になるとそれが肉全体に占める割合は2割を切り、1人あたり20kgほどしか食べなくなっているんです」(前出・特派員)
 
たとえ牛肉を食べるにしても、選別が進んでいるようだ。

アメリカでは牛肉に『オーガニック』とか『ホルモンフリー』と表示したものが売られていて、経済的に余裕のある人たちはそれを選んで買うのがもはや常識になっています。自分や家族が病気になっては大変ですからね。健康志向の人の中には、大豆など植物由来の『ダミービーフ』を使う人もいます」(ニューヨークで暮らす日本人商社マン)
 
ホルモンフリーの商品は通常の牛肉より4割ほど高価になるのだが、これを扱う高級スーパーや飲食店が5年前くらいから急増しているそうだ。健康志向を持つ人や富裕層といわれるハイクラスのアメリカ人は、とっくに肥育ホルモンの使われた牛肉など口にしないのだ。
 
ホルモンフリーの牛肉は高いが、体にいい肉を食べたいのは中産階級も同じ。昨年夏、日本にもある人気ファストフード店バーガーキングが「インポッシブル・ワッパー」というメニューを発売し、全米で話題になったという。

「100%大豆由来の“ダミー肉”を使ったハンバーガーですが、値段は通常の牛肉のハンバーガーより1ドル高いだけ。味もよくて、知らずに食べたら気づかないレベルです。しかも、かじるとまるで血がしたたるようにジューシー。それでいて脂肪15%減、コレステロール90%減、というのがアメリカ人の胸に響いたようで、人気を集めています」(在米留学生)
 
このような「植物由来のダミー肉」はアメリカ国内の3万店舗以上のスーパーマーケットで売られている。バーガーキングのように通常の肉と比べて値段は少ししか変わらないとあって、若者や中産階級にも充分手が届く価格なのが魅力だ。市場規模は急速に拡大を続け、今年中に52億ドルに達するといわれている。

「大学のクラスメートと話していても、オーガニックミートの話はよく出ます。私はベジタリアンではないし、乳製品も摂らないヴィーガンとも違うけれど、やっぱりこちらの生活では意識しないと肉食が多くなる。がんも怖いし、積極的に取り入れています。“安い牛肉を食べるのはダサい”みたいな風潮すらあります」(別の在米留学生)
 
では、アメリカで大量に育てられているはずの肥育ホルモン入り牛肉はどこへ行くのだろうか──そう、ホルモン剤入り牛肉を食べさせられているのは日本人だ。耳を澄ませば、トランプ大統領の高笑いが聞こえてこないだろうか。まさに何も知らないのは、日本人だけなのだ。

「安くなった」と小躍りして子供たちにアメリカ産牛肉のステーキを食べさせている場合ではない。

※女性セブン2020年2月20日

・発がんリスク指摘の米国産牛肉、無邪気に食べるのは日本人だけ(マネーポストweb 2020年2月20日



(上)将来、アメリカ産牛肉の輸入量は国産牛の倍以上に
 
※発がんリスクのある「肥育ホルモン」が含まれたアメリカ産牛肉が激増──。2月7日の財務省の速報で、アメリカ産牛肉の輸入量が前年の122%に増加したことがわかった。ますます増える“恐怖の牛肉”は、そこかしこに潜んでいる。
 
都内にある全国チェーンのファミリーレストラン。パート主婦の坂田さん(仮名)は家族で来ることが多いという。

「ここなら、家族みんなの食べたいものがあります。夫はサーロインステーキ、中学生の息子はチーズハンバーグ、小学生の娘はビーフシチューがお気に入り。食材を買って自炊するより安いメニューもあるんですよ! 月に何回かは利用しています」
 
カラフルなメニュー表を見ると、ステーキには「アンガス牛」の表示。ただ、ハンバーグにもビーフシチューにも、表示はなかった。実はそれ、すべてアメリカからの輸入牛である。
 
今年1月から関税率が下がり、輸入量が激増しているアメリカ産牛肉には恐るべき問題点がある。
 
多くのアメリカ産牛肉には、牛の生育を早め、飼育コストを下げることを目的に天然や合成の性ホルモンから作った「肥育ホルモン剤」として女性ホルモン(エストロゲンプロゲステロン)が投与されている。1970~1980年代にかけて、そうした肉を食べた幼い女の子の乳房がふくらんだり、月経が起きるなどの異常な性発育が続出した騒動以来、EUでは1988年に肥育ホルモンの使用が、1989年には肥育ホルモンを使った肉の輸入が全面禁止となった。その後、EU諸国では乳がん死亡率が20%以上減ったという。
 
一方、国産牛肉と比較した研究では、アメリカ産牛肉からは赤身で600倍、脂身で140倍もの女性ホルモン(エストロゲン)が検出されたという報告がある。
 
倫理上“人体実験”ができないため、人体への影響は完全には証明できない。しかし、肥育ホルモン使用牛のリスクは見逃せるものではない。当の米国でも「ホルモンフリー」の肉が人気を博すなど、世界中で問題視され、避けられている。無邪気に食べているのは日本人だけなのだ──。

「スーパーで原産地表示を確認して、アメリカ産牛肉を買わなければいいのでは?」と思う人もいるだろう。
 
たしかにスーパーの生鮮食品は、原産国名表示が必須。しかし、果たしてその「アメリカ産」だけを避ければ、口にしなくて済むのだろうか。

「加工食品は、重量が最も多い食材が肉でない限り、産地を明記する義務はありません。レトルトカレーから冷凍コロッケまで、さまざまな商品に牛肉は入っています。また、お総菜など、作ったその場で販売される食品は、『お店の人に確認することができるから』という理由で、原料原産地表示は不要。肉じゃがや牛肉の炒め物、最近ブームの牛カツだって、安いアメリカ産である可能性は充分あります」(食品ジャーナリスト)
 
産地を尋ねられて即座に答えられる店員が、果たしてどれくらいいるのだろう。

※女性セブン2020年2月27日号

健康被害が問題視される米国産牛肉、使用する大手外食チェーンの見解(マネーポストweb 2020年2月21日)

※2月7日の財務省の速報で、アメリカ産牛肉の輸入量が前年の122%に増加したことがわかった。今年1月から関税率が下がり、輸入量が激増しているアメリカ産牛肉だが、そこには恐るべき問題点が指摘されている。
 
多くのアメリカ産牛肉には、牛の生育を早め、飼育コストを下げることを目的に天然や合成の性ホルモンから作った「肥育ホルモン剤」として女性ホルモン(エストロゲンプロゲステロン)が投与されている。1970~1980年代にかけて、そうした肉を食べた幼い女の子の乳房がふくらんだり、月経が起きるなどの異常な性発育が続出した騒動以来、EUでは1988年に肥育ホルモンの使用が、1989年には肥育ホルモンを使った肉の輸入が全面禁止となった。その後、EU諸国では乳がん死亡率が20%以上減ったという。
 
当の米国でも「ホルモンフリー」の肉が人気を博すなど、世界中で問題視され、避けられている。無邪気に食べているのは日本人だけなのだ──。
 
原産国名表示が必須となるスーパーの生鮮食品は、産地が確認できる。しかし、加工食品は、重量が最も多い食材が肉でない限り、産地を明記する義務はない。レトルトカレーから冷凍コロッケまで、さまざまな商品に牛肉は入っている。また、お総菜の肉じゃがや牛肉の炒め物も、安いアメリカ産である可能性は充分あり得るのだ。
 
2月6日、国民民主党岸本周平衆院議員のツイートが波紋を広げた。

《牛丼をいただきました。成長ホルモンや成長促進剤を使ったアメリカンビーフの可能性が高く、健康には悪いのですが、安くて美味しいのでよく食べます》
 
同議員のフェイスブックには、先のツイッターにはない、こんな一文が添えられていた。

《成長ホルモンや促進剤を国内で禁止しながら、使用した肉類の輸入を許可している先進国は日本だけです》

すると、賛否両論のコメントが殺到し、SNSでは炎上にも近い議論に発展。なかには「アメリカ産牛肉に高濃度の女性ホルモンが残留しているのは事実」「文句は牛丼屋ではなくアメリカに言ってくれ」といった意見も散見された。
 
ここで、牛肉を使用する大手外食チェーン22社(ファミレス、牛丼、ハンバーガーなど)にアンケート取材を行った。「牛肉を使用した主力商品」とその「原産国」を問うもので、その結果、4社が主力商品にアメリカ産牛肉を使用していると回答した。
 
牛丼チェーンA社は、アメリカ産牛肉の使用を認めたうえで、このように回答した。

「国際機関が定める摂取許容量を下回る範囲内で肥育促進剤の残留基準を設定し、それを超える食肉の輸入や販売を禁止することで、食品の安全を確保しています」
 
ライバルの牛丼チェーンB社の回答はこうだ。

「肥育ホルモン剤に限らず、治療・予防のための薬剤等を決められた用法、用量で使用しています。公的な検査のみならず、当社の自主検査においても基準を超える残留の事例は一切ありません」
 
いずれも「アメリカ産牛肉は使用しているが、残留ホルモン量が基準値を超えることはないため安全だ」という主張だった。
 
ハンバーガーチェーンC社は、アメリカ産、国産、オーストラリア産などの牛肉を、商品によって変えているという。その見解はこうだ。

「産地や部位により風味やジューシーさ、食感が異なるため使い分けています。自主検査により食品衛生法で定められた基準に違反していないことを確認しています」
 
現在、多くの外食チェーンがインターネット上に「原産地情報」を公開している。全国展開している大手ファミレスや焼肉店も、開示されている牛肉の原産地は多くがアメリカ産だった。

一方、アメリカから進出したハンバーガーショップD社の回答には驚かされた。

「当店では、アメリカ本国と同様に、アメリカ産のホルモン剤不使用ビーフを100%使用しています」
 
アメリカが本拠の店が「ウチはアメリカ産牛肉を使っていますが、ホルモン剤不使用のものだけを選んでいます」と胸を張る結果には、皮肉を感じる。日本以外の国では、肥育ホルモンが入っている肉とそうでないものがしっかり“別モノ”と認識され、差別化されているのだ。
 
それとは裏腹に、日本ではアメリカ産牛肉を使う外食店がますます増えそうなのが現実だ。

※女性セブン2020年2月27日号

・肥育ホルモン剤入り牛肉の輸入規制ない日本 そこにある食卓の危機(マネーポストweb 2020年2月25日)

※発がんリスクのある「肥育ホルモン」が含まれたアメリカ産牛肉の輸入量が激増している。財務省の速報では、今年1月のアメリカ産牛肉の輸入量は2万1428トン。2019年1月は1万7525トンだったから、なんと前年同月比122%。その理由はトランプ大統領に“押しつけられた”日米貿易協定の発効だ。
 
1月1日からアメリカ産牛肉の関税率は38.5%から26.6%に下がり、4月からは25.8%になる予定だ。すでに、農畜産業振興機構が2月10日に発表した速報によると、2月初週(3~7日分)の輸入牛ばら肉1kg当たりの卸売り価格は、オーストラリア産が3円値上げした半面、アメリカ産は10円の値下げとなっており、アメリカ産の方が100円近く安い。このペースで価格差が開いていけば、流通量が上増しする可能性が高い。
 
東京大学大学院農学生命科学研究科教授の鈴木宣弘さんはこんな見通しを明かす。

「牛肉の食料自給率(輸入牛肉に対し、日本国内で生産されている割合)は現在、35%くらい。それが2035年くらいになると16%にまで下がると試算しています。安価な輸入品が大量に日本市場に流入することで、国産の農畜産品が割高になるからです。同時に、日本の生産者が苦境に陥るのは間違いない」
 
私たちが値段で食材を選んでいると、安全な農産物を生産する日本の農畜産業の担い手が激減。極論すれば、いなくなってしまうかもしれないのだ。鈴木さんが続ける。

「肥育ホルモン剤以外にも、『ラクトパミン』という家畜の餌に混ぜる成長促進剤があります。人体に有害だとして、EUだけではなく中国やロシアでも使用と輸入が禁じられていますが、日本は国内使用は認可されていないものの、アメリカからの輸入は素通りになっているのです」
 
日本の“食の安全後進国”ぶりが浮き彫りとなる話だ。それでもアメリカ産牛肉は破竹の勢いで日本に流入している。今年1月分の輸入量から見ると、いずれは長らく牛肉の輸入元の第1位に君臨し続けたオーストラリア産牛肉を上回る予想もある。
 
実は、肥育ホルモンはオーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどでも使用されている。ただし、アメリカ以外の国は、国際機関「コーデックス」が定めた基準を下回る残留基準値をそれぞれが取り決め、それを上回るものは出荷されないが、アメリカだけは「残留基準値の設定は不要」として定めていない。さらに、国内での肥育ホルモンの使用を禁じているはずの日本は、国際基準を大きく超える残留基準値を定めている。肥育ホルモンが“測定不能”なほど含まれているアメリカ産牛肉を受け入れるためでなければなんだというのだろうか。

「国産なら何も書いていなくてもホルモン剤不使用ですが、輸入牛肉で、特に『ホルモンフリー』などと明示されていないものは、必ず肥育ホルモンが使われていると思った方がいい」(鈴木さん)

財布を取るか、健康を取るか
 
食の安全に詳しいライターの小倉正行さんも、肥育ホルモン剤入り牛肉の輸入をまったく規制していないのは日本だけだと話す。

「諸外国は日本向けだけに肥育ホルモンを使う。日本は先進国で唯一といえる肥育ホルモン剤入り肉の輸出先になってしまっています」
 
蔓延するホルモン残留肉を避ける方法は3つある。1つ目が、国産肉を買ってきて自分で料理すること。2つ目は外食時に「緑提灯」の店を選ぶこと。

「国産食材の使用量が50%以上の飲食店は、店頭に緑色の提灯を掲げている。『5つ星』と明記している店の使用する食材は90%以上が国産。安全意識が高いので、必ず原産地も教えてくれます」(小倉さん)
 
最後がオーガニックをうたうレストランに行くこと。農水省JAS認証する準備を進めており、有機食材を80%以上使用することが条件だ。自然素材で育てられ、もちろん肥育ホルモン牛肉は使えない。財布には厳しそうだが、ひるんではいけない。

「安いものを食べて病気になったら手遅れです。ホルモンは10年単位で影響が出るといわれています。今動かないといけない」(鈴木さん)
 
それでもまだ“安い”を理由にアメリカ産牛肉を買いますか?