相手にバレないように、組織をダメにするのが、スパイの仕事ですからね。2008年に公開されたそうです(正確に言うと、CIAの前身組織、『Office of Strategic Services』の作成文書です)。
でね、これがもう、唸ってしまうぐらい「的確」なんですよ。渡辺千賀さんが訳しているものを紹介すると――。
●「注意深さ」を促す。スピーディーに物事を進めると先々問題が発生するので賢明な判断をすべき、と「道理をわきまえた人」の振りをする。
●可能な限り案件は委員会で検討。委員会はなるべく大きくすることとする。最低でも5人以上。
●何事も指揮命令系統を厳格に守る。意思決定を早めるための「抜け道」を決して許さない。
●会社内での組織的位置付けにこだわる。これからしようとすることが、本当にその組織の権限内なのか、より上層部の決断を仰がなくてよいのか、といった疑問点を常に指摘する。
●前回の会議で決まったことを蒸し返して再討議を促す。
●文書は細かな言葉尻にこだわる。
●重要でないものの完璧な仕上がりにこだわる。
●重要な業務があっても会議を実施する。
●なるべくペーパーワークを増やす。
●業務の承認手続きをなるべく複雑にする。1人で承認できる事項でも3人の承認を必須にする。
●全ての規則を厳格に適用する。
……というようなものです。
どうですか? これが、CIAの前身組織が、「敵国の組織をダメにするために実行しろ!」と定めたマニュアルの一部なのです。
◆あなたの会社にもスパイがいる!?
今、日本でこのマニュアルに当てはまらない組織は本当に少ないと思います。大企業やお役所になればなるほど、ずっぽりとこのサボタージュ・マニュアルを実行しているはずです。
僕は自由業なので、「可能な限り、案件は委員会にして、最低5人」という記述に、特に唸りました。
企画会議や製作者会議なんてのは、5人以上になると訳が分からなくなって、間違いなく、失敗するか平均を取った凡庸でつまらないものになるのです。けれど、みんなそれが一番いい方法だと信じて実行しているのです。
大企業なら、みんな真剣に「注意深さを促す」ことや「業務の承認手続きをなるべく複雑にすること」に集中しているはずです。
お役所なら、これまた熱心に「指揮命令系統を厳格に守る」とか「組織的位置づけにこだわる」なんてことを積極的に進めているはずです。 まったくの正当性を持って、少々の不自由さは感じても、組織をダメにしようなんて明確に思いながらやってる人はいないと思います。
僕は、あんまり感動したので、このページのURLを張り付けてツイッターで呟きました。
続々と「こ、これは俺の会社じゃないか!」というツイートが帰ってきました。
僕は、答えました。
「そうですか。それなら、あなたの会社には、CIAのスパイがいるんです!」
さあ、あなたも社内に紛れ込んでいるCIAのスパイに苦しめられているのなら、今週の「ドン・キホーテのピアス」をコピーして、CIAのスパイの机の上にさりげなく、置きましょう。
「お前のたくらみはまるっとお見通しだぜ」と、メモを残したら筆跡でバレるかもしれないので、ただ、このコピーだけを、置きましょう。
大丈夫だ。おいらが、代わりに言ってあげる。
「組織をダメにするために、密かにサボタージュ・マニュアルを実行しているお前! お前がCIAのスパイだということは、こちとら、お見通しだからな!」