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「経団連が消費税に“固執”するわけ」  税制・年金 消費税の“罠

2010/7/19
経団連が消費税に“固執”するわけ」  税制・年金
消費税の“罠”はツケ回しの負担方式よりの続きです。

■ 消費税還付など付加価値税(消費税)の諸問題

● 消費税の内税方式化の意味
● 輸出免税と消費税還付問題
● 受け取り利息に課税されない問題
● 日本経団連奥田会長が消費税に“固執”するわけ


こちらも是非お読みください: 消費税率がアップすると輸出優良企業の利益が自動的に増大する仕組み
「消費」税のフェイク


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■ 消費税還付など付加価値税(消費税)の諸問題


● 消費税の内税方式化の意味

今年(2004年)4月から消費税は、本体価格との総額表示に移行した。

この変更自体は、消費税の“企業自己負担”に少しは近づくものとして評価している。

中小小売業は価格競争で厳しい状況になるだろうが、ネット98円+消費税5円がグロスで98円になっていくと予測している。

(そのような動きは実際にも見られる)

それで目減りする粗利益は、商社やメーカーに対する仕入価格下落要求に向かう部分もあるだろう。

日本では消費者が値引き交渉をすることがあまりないから、内税化されることで家計の消費税負担額が少しは軽減されると思っている。

(本体価格を値引きさせれば、消費税もそれにつれ減少するから、ダブルで安くなる)

しかし、財務省が消費税の内税方式化を打ち出したのは、将来の消費税率アップに備えることが目的である。

消費税が10%になり、外税であれば、ネット98円+消費税10円になる可能性が高い。ある商品に付けられている98000円の価格表示を見て、頭の中で10%の消費税を加算して購買行動を断念する人が増えるはずだ。

財務省は、“企業努力”で、ネット98000円の商品は消費税込みで98000円にして欲しいと思っているはずだ。

その“企業努力”がどこかにしわ寄せがいくかたちでなく実現される条件は、生産性上昇(輸入物価下落)と生産性上昇がスムーズに成果となるための緩やかなインフレ(もしくは輸出増加)である。

現在の日本経済のようにそのような条件がなければ、取引関係で“弱い立場”にある企業や消費者にしわ寄せされることになる。

同じ財を扱うある企業は消費税がアップされても付加価値が減少しないのに、別の企業は付加価値を大きく減少させるという歪みが生じる。

財務省は、内税化に続いて、インボイス方式を採用すると思われる。

売上=仕入伝票に消費税額を明記し、消費税納付義務者の消費税の控除額は、その金額合計に基づくようにするものである。

前述したように、現行の「どんぶり算定方式」では、最終消費者が負担する消費税が全額国庫に入る保証はない。

消費税を負担していない仕入も消費税を負担したとみなし、当該企業の納付消費税額から控除されるからである。

仕入で消費税を負担していないのに、それを控除すれば、それだけ粗利益が増えることになる。

インボイス方式であっても付加価値税(消費税)の本質は変わらないから、インボイス方式が採用される前に物品税の適用範囲拡大に移行して欲しいと思っている。


● 輸出免税と消費税還付問題

付加価値税(消費税)の本質は自国経済を徐々に衰退させる“悪魔の税制”だが、それのような税による増収を日本経団連が嬉々として主張するわけは、輸出比率が高い企業が、国内でどれだけ売上をあげていようとも、消費税を納付しないどころか、逆に還付金を受け取るというとんでもない仕組みになっているからである。

これは、付加価値税である消費税を物品税であるかのようにデタラメに解釈した“国家的詐欺”である。

消費税を廃止したり消費税税率アップを止める最良の策は、「輸出免税」を「輸出非課税」に変更することである。

これにより、3兆5千億円もの国内売上がありながら、逆に1300億円もの消費税還付金を受け取っているトヨタ自動車は、1000億円程度の消費税を納付することになるはずだ。

そうなれば、さらに消費税の負担が増えることにつながる消費税税率アップ政策に対する奥田日本経団連会長の発言は確実に変わる。



● 受け取り利息に課税されない問題

銀行は、振り込みやその他の手数料に消費税が課税されているだけで、受け取り利息には消費税が課税されていない。

もっとわかりやすく言えば、銀行員の給与関連費は、公務員の給与関連費と同じで、一般企業の給与関連費のように付加価値税(消費税)の対象にはなっていない。

もちろん、銀行員は、可処分所得から消費に回す金額に応じて消費税を負担することで、一般企業に勤めている家計の消費税負担を薄める役割は果たしている。

しかし、支払利息の原資である付加価値に課税されている消費税額ほどは消費税を負担していないはずである。

(銀行が受け取っている貸し出し利息は9兆円だから、銀行員全体が4500億円を負担してとんとんになる。さらに言えば、国債など債券から得る利息分も負担しなければバランスがとれない)

銀行員も必死に働いているのだろうが、財やサービスを供給する勤労者が、銀行が受け取っている利息の原資に課税している消費税まで負担するのは理に適わないことである。

東京都や大阪府が銀行税の導入を模索したが、このような現実に照らせば、銀行に追加的課税を行うのは理に適っているとも言える。

国民経済と財政の問題に進む前に、税金で税金を納付したり負担する虚構の問題をもう一つ取り上げたい。

先行の二つの書き込みでは公務員が納付する所得税や公務員が日々の生活で負担する消費税の問題を取り上げたが、今回は、政府部門や地方自治体部門が負担する消費税について説明する。

まず、平成16年度の消費財歳入予算額は9兆5千億円だから、地方の消費税歳入は2兆4千億円程度と推測でき、政府と地方自治体の消費財歳入は合計で11兆9千億円になる。

47兆6千億円から国家公務員の給与である11兆8千億円を差し引くと、35兆8千億円である。これに財政投融資20兆5千億円を加算した56兆3千億円が、政府による財の購入や事業のために支出されていると推定する。(とりあえず、55兆円と考える)

地方財政で支出される84兆7千億円から地方公務員の給与26兆8千億円を差し引き、地方交付税は既に考慮しているので、国から地方に支出される15兆円ほども差し引くと42兆9千億円になる。

政府支出と地方支出を合わせると92兆9千億円になる。(これもとりあえず、90兆円と考える)

このなかには消費税非課税のものも含まれているはずなので、80兆円が消費税の対象となる財や事業活動に支出されると考えてみる。

80兆円の公的歳出には消費税が含まれているから、正味の支出は76兆2千億円で、消費税負担分が3兆8千億円と推定することができる。

公務員の人件費総額38兆6千億円のうち消費税対象の消費に半分の19兆8千億円が支出されているとしたら、負担している消費税はおよそ1兆円になる。

この二つを合計すると、将来の税金である借り入れ金を歳入(原資)とする分も含めて、消費税4兆8千億円は税金が負担していると言える。


なんと、政府と地方自治体の合計消費税歳入11兆9千億円のうち4兆8千億円、率として40.3%が税金で負担されたものなのである。

地方分の消費税歳入は2兆4千億円だから、なんとその2倍もの消費財歳入が元は税金でしかないものである。


財政危機のなかで進められようとしている税制変更は、所得税として高額所得者の負担減と基礎控除額の低減による低中所得者の負担増が意図され、法人税は財界の意向を受けさらなる低減化が志向され、消費税に増税のスポットが当てられるというものである。

消費税未納どころか消費税還付を1千6百億円も得ているトヨタ自動車の会長が会長を務めている日本経団連は、消費税率を徐々に引き上げて16%にしていく政策により、財政再建法人税減税&高額所得者減税を達成する提言を行っている。

今回の説明でご理解いただけると思うが、消費税率が上がれば上がるほど同じ規模の歳入で同じ規模の歳出であっても、実質は目減りすることになる。

もちろん、税金で支払った(負担した)税金は、政府部門か地方自治体部門に還流するのだから、そのような循環を踏まえたかたちで財政が組まれていれば、それで起きる問題は解消できる。

しかし、「デフレ不況」と財政危機のなかゼロシーリングや財政支出の伸びが抑制される政策と消費税率アップが同居すれば、財政支出の実質額は減少し、国民生活や経済活動に大きな影響を与えることになる。

それは、政府部門と地方自治体部門の財政支出が120兆円で固定化されるなかで消費税率がアップされていく過程を考えればわかる。

120兆円のなかには、事業支出で負担する消費税や公務員給与から負担される消費税が含まれている。

消費税が5%のときに、その総額が4兆8千億円だとすれば、実質の財政支出は115兆2千億円である。

消費税が10%になれば、ざっと9兆6千億円の消費税が税金で負担されるようになり、実質の財政支出は110兆4千億円になる。

消費税が10%になったときに消費税5%のときと実質的に同じ内容の財政支出にするためには、127兆円規模にしなければならない。

姑息で悪知恵が働く財務省官僚は、財政再建という自分たちの“使命”を果たすべく、せいぜい123兆円(実質111兆8千億円)規模にとどめ、国民に“自助努力”を求めようとするだろう。

消費税が典型だが、税金の支出が見掛けの税金を生み出す税制は、財政の内実を見えにくくするのである。


● 日本経団連奥田会長が消費税に“固執”するわけ

日本経団連が消費税アップを主張するのは、それが法人税減税や高額所得者減税の財源になることだけではなく、トヨタを中心とした輸出企業の利益につながるからである。

トヨタ自動車は、国内で3兆5千億円もの売上を誇りながら、消費税を1円も納付しないどころか、「輸出戻し税」制度に拠り1600億円もの還付を受けている。

トヨタが計上している1兆円の経常利益にはこの1600億円も含まれている。

これは、消費税の課税対象にならない輸出であたかも消費税課税があったかのように国税庁財務省)が取り扱うことで成り立っている“国家的詐欺”である。

(国家的詐欺手法の内容は末尾の書き込みリストを参照していただきたい)

トヨタ自動車は、錯誤でしかないが、消費税がアップしても、負担はゼロどころか、還付金が増えてさらに得をすると考えているのである。

もちろん、自動車ディーラーは、顧客に自動車を販売したとき消費税を負担してもらい、しかるべき税処理を行って、納付すべき消費税を支払っている。

しかし、トヨタ本体を含めて考えれば、顧客が負担した税金はまったく国庫に納められていないのである。


【例】

トヨタのディーラーへの卸値:200万円(消費税込みで210万円)
ディーラーの販売価格:250万円(消費税込みで262.5万円)


トヨタは、ディーラーに10万円の消費税を負担してもらうが、還付金が1600億円だからそれを国庫に納付することはない。

ディーラーは、顧客に12.5万円の消費税を負担してもらうが、トヨタに支払った消費税10万円を差し引きことができるから、2.5万円を国庫に納めるだけである。

250万円の自動車を500万台販売したとしてもディーラーが納付する消費税は1250億円程度だから、ディーラーが納めた消費税総額よりも、トヨタが受ける消費税還付金1600億円のほうがずっと大きい。

トヨタの卸値がいくらかわからないが、トヨタの国内販売台数は175万台程度しかないから、トヨタ車の国内販売でせいぜい500億円の消費税が納付されているはず)


トヨタに限らない話だが、国産乗用車の購入者は、負担した消費税を国庫ではなくメーカーに支払っているのである。

まだ輸出企業への消費税還付は当然と思っている方は「消費税」のネーミングに惑わされています。
「消費」税のフェイク
を読まれることをお勧めします。
7/11/26